鴎外のドナウ
1886年8月9日、独逸日記によれば鴎外は、ミュンヘンからベルリンに赴く。もちろん列車。午前7時30分にミュンヘンを発つ。レーゲンスブルクを過ぎたあたりで以下の記述が見える。
「細流の石間にせんせんたるを見る」
「せんせん」は難しい漢字で打てない。鴎外の記述を豊かに彩る漢語表現なのだが、パソコンで簡単に打てない漢字が多くて興ざめだ。注には「浅い水がよどみなく流れる様」とある。「細流」はもしかするとドナウ。2012年3月のドイツ旅行のとき、自由時間を利用してニュルンベルクからレーゲンスブルクに向かった長男と私は、進行方向左側に目を凝らした。レーゲンスブルクに到着する直前にドナウ川が見えるからだ。実際に見えたドナウの印象から、先の鴎外の表現がドナウであると直感したのだが実際にはおそらくナープ川である可能性が高い。このとき鴎外の座席はおそらく進行方向の右側。
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