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2014年5月22日 (木)

軌道幅戦略

欧州の鉄道で採用されている軌道幅を調べると標準軌1435mmが大勢を占めている。日本の新幹線と同じ幅だ。ドイツは鉄道総延長のおよそ96%を標準軌が占める。

標準軌以外を採用して欧州で目立つのが、ロシアとスペイン。ロシアは1529mmつまり5フィートジャスト。鉄道の導入にあたり指導を仰いだアメリカ人技術者の影響。現在でこそ世界最大の標準軌大国アメリカだが、当時は南部を中心に5フィート軌道が幅を利かせていたからと説明されるが、実はもっと深い。ナポレオンのロシア遠征がトラウマになっていたロシアは、フランスと同じ軌道幅を避けたのだ。フランスばかりかドイツも標準軌だから、国境を突破されたが最後、鉄道を使えば自国内を補給部隊が縦横無尽に活動できるという事態を恐れた。国土防衛上の観点から標準軌を避けたということだ。

ピレネー山脈を隔ててフランスと接するスペインも事情が似ている。こちらはロシアとも違う1686mm。ポルトガルをも含むイベリア軌道である。戦時下でこそ防衛上のメリットがあるのだが、平和な世の中になると軌道幅違いは交通の妨げでしかない。スペインは国際特急AVEの乗り入れを前提とした新線の建設に際し、自国在来線の軌道幅より狭い標準軌1435mmを採用した。

さてさてフランスとの関係でいうなら宿敵ドイツは、フランスと同じ標準軌だ。ドイツ最初の鉄道が標準軌だったという偶然の仕業とも言い切れない。ドイツ帝国成立後、ビスマルクが推進する鉄道国有化に頑強に抵抗した諸領邦は、独自に鉄道を敷設したが、軌道幅は軒並み標準軌だ。バーデン公国で1600mmが採用されたが、1870年代までに標準軌に改修されている。ナポレオンに蹂躙された記憶がありながら、標準軌を避けていないのが面白い。それどころか、その鉄道を戦略的に使って普仏戦争を勝利に導いた。

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