都市間移動
正確な定義は私の手に余る。
東京の新宿を基点に考えてみる。池袋や渋谷に行く場合には、「都市間移動」とは多分言わない。多分中野や錦糸町でも言わないだろう。八王子や川崎になると怪しいが、利用者の感覚では多分、都市内移動の気軽な感じだ。千葉や横浜だと「都市間移動」と言えそうだが、気分はまだまだ手近だ。小田原、宇都宮くらいになると自信も出て来る。
ブラームスの時代に当てはめてみる。大作曲家と認知されて以降、ブラームスは演奏旅行で各地を回った。とはいってもそこそこの大きな街が訪問の対象だ。ブラームスは30歳代以降、都市間移動を繰り返す生活をしていたことになる。
嬉しいことだ。その際の交通手段はほぼ鉄道であったと断言していい。いやむしろ鉄道の登場こそが、都市間移動を庶民に解放したととらえるべきだ。やがて都市間移動の手段は、遅れて台頭した自動車や航空機に侵食されて行き、現代ドイツにおける旅客都市間移動のシェアでは、それら両者に抜かれてしまっているのだが、ブラームスが生きた19世紀後半は、鉄道の黄金時代だった。
だからブラームスの生涯を解きほぐす際に、座右に備えるべきは「鉄道地図」のほうがよい。「道路地図」を補完的に用いて、情報の偏りを補正することは必要だが、メインは鉄道地図であるべきだ。現代鉄道の産物である高速鉄道ICE専用線さえ脳内消去すればよい。道路地図からアウトバーンを無視するより効率がいい。
現代の日本で、ドイツの鉄道地図と道路地図を入手する難易度を考えると、道路地図の方が格段に容易だ。価格も安い。鉄道地図になるとブラームス像のふくらみが違う。ブラームスの都市間移動を想像する際に、その経路が本当にリアルに特定できる。
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