さまよえるオランダ人
名高いワーグナーのオペラのタイトル。ドイツ語では「Der Fliegende Hollander」綴る。英語では「Flying Dutchman」だ。元々は喜望峰がらみの幽霊船の話だったがワーグナーがそれを題材にとった。記事「空飛ぶハンブルク人」で取り上げたベルリン-ハンブルク間の特急列車の名前「Der Fliegender Hamburger」が、この話に由来するのは明らかだ。さすがにこれを「さまよえるハンブルク人」と訳すのは気がひけただけだ。
それにしても幽霊船にまつわる名前を列車名に採用するとは大胆な話であると、早合点してはいけない。1851年英国グレートウエスタン鉄道に登場した特急は、長らく世界最速の列車の座に君臨していた。もちろん蒸気機関車が牽引するのだが、何と300kmの距離を平均時速85kmで駆け抜けていた。その列車の名前が「Flying Dutchman」だった。しかしながら当時英国で無敵を誇った競走馬の名前という説もある。
つまりドイツの空飛ぶハンブルク人は、世界最速の列車を運行するにあたり、過去の世界最速の列車名の中の「ダッチマン」の部分を「ハンブルク人」に差し替えたものだ。幽霊船にちなんだのではなかった。むしろ並々ならぬ決意の表明であった。
和訳には注意が要る。幽霊船なら「さまよえる」で結構だが、列車名としては「空飛ぶ」あたりに落ち着かざるを得まい。
コメント