急行馬車
記事「空飛ぶハンブルク人」で、ベルリン-ハンブルク間の高速列車の話をした。ベルリンハンブルク間およそ300kmの所要時間が2時間18分であることを驚いた。現代のICEでも90分かかるからだ。
首都ベルリンと港湾都市ハンブルクを結ぶ鉄道は日本で言えば東海道本線のようなものだ。この所要時間はいつも人々の興味の対象だった。ブラームスが生まれた2年後に産声を上げた鉄道だったが、それ以前は長距離馬車が運行されていた。鉄道に交代する直前の馬車はベルリンとハンブルク間にどれほどの時間をかけていたのか調べていて興味深い話をみつけた。
それが急行馬車だ。ドイツ語では「Schnellpost」と綴る。1820年代まで通常の馬車便を使うとベルリン-ハンブルク間はおよそ90時間かかっていた。替馬や郵便作業、乗客の食事は入っていたが、宿泊に要する時間は除かれた値だ。1830年頃急行馬車が考案された。馬車の台車に金属製の板バネが用いられるようになって、乗り心地が向上したことが大きな理由らしい。ドイツらしくことこまかな運行ルールが定められた。替馬や郵便業務にかかる時間に制限を儲けたばかりか、客の食事時間にも干渉した。結果達成された所要時間が31時間30分だ。丸5日かかっていたのが3日短縮されたというイメージだ。
ブラームスが広く活動を始めた1850年代には鉄道にとって変わられていたから、ブラームスが急行馬車に乗った可能性は低いが、前期ロマン派の巨匠たちは乗っていたかもしれない。
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