投資家クララ
ブラームスが音楽家として独り立ちし、そこそこの報酬を得るようになった頃から、資産の運用についてクララ・シューマンから助言を受けている。
その周辺の事情を調べていて興味深い話にたどり着いた。
1867年4月26日に、クララがデュッセルドルフからブラームス宛に出した手紙だ。その年の2月から続いたクララの英国公演の報酬が思いがけない金額になったので、銀行に相談したとある。一緒に株か債券を買いませんかとブラームスに持ちかけている。
そうした文脈の中で、クララは鉄道株を買いたいと明記している。しかし「もしもフランスとの戦争になればリスクを伴う」とも付け加えている。
手紙が書かれた1867年と言えば普墺戦争は終わっている。ドイツ統一の妨げとなるオーストリアは退けたものの、ビスマルクの野望の前にはフランスが立ちはだかっている情勢だ。ドイツには統一の達成のために、いずれはフランスとの戦争は避けられないという風潮があった。クララはこの風潮を踏まえて鉄道株のリスクを分析しているということだ。
クララが購入を狙っている鉄道株は、フランスとの戦争になれば値下がりすると踏んでいることがわかる。つまり西部国境付近の鉄道会社の株に違いない。
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