手前
記事「橋崩落」でクララたちの乗った列車が、豪雨による橋の崩落に危うく巻き込まれそうになったと書いた。シューマンの4女オイゲーニエの証言だ。ところがその証言に厄介な記述がある。問題の橋の位置だ。
オイゲーニエはその橋を「ヴェローナ手前」と形容している。ミラノからヴェローナを経由してヴェネツィアに向かうルートだということを前提とするなら、その橋は列車がヴェローナに入る前でなければならない。地図を見る限り、アディジェ川はヴェローナの中央駅に相当する「Verona Porta Nuova駅」よりヴェネツィア側にある。手前という形容は不自然だ。「Verona Porta Nuova駅」の開業は1851年だから駅の遷移は考えられない。
「ヴェローナの手前」というのは駅ではなく「市街地の手前」という苦し紛れの解釈も出来ぬわけではないが、いかにも不自然だ。
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