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2014年12月25日 (木)

最強のピアニシモ

去る12月20日、次女の後輩たちのオーケストラ部は、恒例の病院慰問に赴いた。総合病院のエントランスでおよそ90分のクリスマスコンサートだ。13時少し過ぎから、楽器や器材の搬入が始まる。大型楽器はもちろん、ひな壇まで持ち込んでのセッティングなのだが、整然とした作業っぷりで30分もしないうちにリハーサルに入る。演奏会後の撤収と合わせて、キリリキビキビとした動きは、毎度毎度のことながら見事で鑑賞の対象でさえある。続くコンサートの出来映えを量るバロメーターだ。

会場は広くないので、オーケストラを2つに割る。前半は1年生だけのオケだ。1年生オケデビュウである。「星に願い」「ソリすべり」「ふるさと」など、デビュー演奏の緊張感がひしひしと伝わってくる。もはやお家芸のマスカーニ「カバレリアルスティカーナ」より「間奏曲」を聴いて驚いた。入学からわずか8ヶ月の1年生だというのに、DNAを感じさせてくれる演奏だった。再来年のドイツはこの子らが中心になる。この日のカバレリは、その原点となるべき演奏だ。チェロバスの支えががっしりと行き届いた原石。

ハーフタイム。

演奏を終えた1年生が、聴衆ひとりひとりにクリスマスカードを手渡す。カードはオリジナルの手作り。同じものは2つない。急ごしらえの客席に整然と割って入り、言葉をかけながら渡す。もちろん2階席にも来る。デッキ沿いに並んだ車椅子のお年寄りに言葉をかける。膝を床につけて、お年寄りの顔を見上げながら、笑顔で手渡すのを目の前で見た。この気持ちが演奏の基礎になっていると確信した。入部8ヶ月の1年生の自然な仕草に演奏の本質を見せられた思いだ。

実はそのころステージには、2年生たちが音もなく入場していた。クリスマスカードを1年生が配る間、後半の演奏を担う2年生オケが準備するという、見事な段取りである。

その後半スタートはチャイコフスキーの「白鳥の湖」から「情景」だ。冒頭弦楽器のトレモロとハープの伴奏に乗って、超有名なオーボエのソロ。オーボエ独奏の生徒が、実は高校からオーボエを始めたとは、誰も気づくまい。伴奏に回る弦のトレモロが「うちのオーボエ聴いて」というたたずまいだ。ああそれから、毎度毎度の凛としたハープの安心感が空気を引き締める。1年生オケとの違いを見せ付けるお姉さまたちの貫禄が、やがて大きなうねりとなる。

前置きが長くなった。

それは、ラストナンバーのクリスマスソングメドレーの中で起きた。明るめのクリスマスソングが披露された後、潮が引くように音量が静まった中、第一ヴァイオリンが、耳になじみのメロディーを奏で始めた。「きよしこの夜」だ。弦楽器とハープ、そしてクラリネットとファゴットが彩りを添えるシンプルな演奏なのだが、ただならぬ弱音だ。全聴衆が「何が起きたのか」といわんばかりにステージに吸い寄せられた。「救いの御子は」ではさらに音量を落とす。本日発せられた最も小さな音だというのに、この瞬間感動は最大となった。この1年の出来事あれこれ全部を一瞬で思い起こさせてくれるようなピアニシモ。音量は最弱なのに、こめられた思いは最強。「大切なことを小声で」を絵に描いたよう。

この感動は言葉で現すのが難しい。「大切なものを両てのひらでそっとすくい取って、上目遣いで見つめながら、これまた大切なひとにそっと手渡す感じ」とでも申し上げるのが精一杯。気持ちの深さは音量じゃないと教えられた。何よりも素晴らしいのは、この演奏効果、子どもたちは皆腹に入っている。それがわかっていなければ絶対に出せない音色だ。コンクールでも何でもない、このささやかな慰問演奏会のために、先生と一緒になってどれほどの貴重な準備が行われたか垣間見るようだ。

なんて幸せな子どもたち。そして自分の耳が「最強のピアニシモ」に反応したことを心から嬉しく思う。

コーヒー特集を勇敢に中断してメリークリスマス。

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コメント

親1さま

あたたかいコメントありがとうございます。
そりゃあもう、極上のピアニシモでした。会場もろとも引き込まれました。お聞かせしたかったですよ。

That was six years ago in December.

市内の病院に入院していた私は、
手術が無事終了し退屈だったので、夕方にホールで
開催されるバイオリンとチェロのミニコンサート
を聴くために、点滴スタンドを引いて病棟を降り
て長椅子に腰掛けていました。
冬なので外はもう暗くて、逆にホールの明るさが
そこが本当の舞台のように思えるくらいでした。

生演奏なんて患者が聴く機会が少ないからでしょうか
皆さん、黙って座ってましたよ。
思い出は一番最後の「きよしこの夜」です。
歌詞カードが配られていて、そこに居る全員で一緒に歌うんです。
看護師なんかも参加して。

患者は心細さから皆同じなのかも知れませんが、
私は歌の途中から、
何が悲しいのか?
何に感謝してなのか?
理由はわかりませんが、もうただ涙が溢れて来て、
泣きながら歌った記憶があります。

だから、
そのピアニシモを私も聴きたかったです。


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