おのぼりさん
田舎から都会に出てきて物珍しげにしている人を指す言い方。幾分の上から目線とユーモアが微妙に錯綜する。
ウィーンのカフェで「コーヒー」などと注文すると、給仕たちは内心「コイツおのぼりさんだな」と察したという。膨大なヴァリエーションを伴うウィーンのコーヒーだから、それ相応の細かな注文をせねばならないのは記事「カフェで注文」で述べたとおりだ。だから「コーヒー」などと注文してしまうとあっさりとお里が知れてしまうということだ。とはいえそこは客商売だから、その場で給仕があからさまな態度を示すことはあり得ぬが、何食わぬ顔で厨房に戻った彼は「ラウ1杯」と注文を流す。「ラウ」は「rauh」と綴り、英語の「rough」に相当する。「適当にしといて」くらいの意味だ。どうせ相手は「コーヒーのわからぬ一見さん」という意識が見え隠れする。
ミルクや生クリームの入るメニューは避けたほうがいい。それらの量や添え方を指定せねばならないからだ。「モカ」や「シュヴァルツ」にしておくのが無難である。
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