チョコレート
ブラームスの伝記の中でチョコレートへの言及はほぼ存在しないと申してよい。「お菓子」「キャンデー」にはわずかな言及が認められるもののチョコレートは全滅である。
ところが、シューマンの伝記の中に興味深い記述がある。音楽之友社刊行の「作曲家◎人と作品シリーズ シューマン」の147ページ6行目。短いので引用する。
6月8日、シューマンの誕生日にブラームスがエンデニヒを訪問して大判の地図帳をプレゼントした。翌日の報告によれば、チョコレートは毒が入っていると言って手にしなかったが、地図帳には熱心だったという。
この6月8日とは1856年のことで、場所はエンデニヒだ。ライン川への投身後収容された療養所での出来事。シューマンの誕生日にブラームスが見舞った情景。前回4月の訪問でシューマンが地図から地名を抜き出す作業に没頭していたのを見て、ブラームスが地図帳を贈ったことが判る。「翌日の報告」というのは、診療所の日誌のことだ。その中に「チョコレート」が出てくる。けれどもこの「チョコレート」は出方がいかにも唐突だ。原文が判らないのでなんとも言えないと申しては愛想がないから妄想を膨らませる。
この「チョコレート」は大判の地図帳と一緒にブラームスがシューマンに贈ったと解することは出来ないか。それでこそ「地図には興味を示したが、チョコには手を出さなかった」という表現が生きてくる。この推測が正しければ、ブラームス唯一のチョコレートネタとなる。
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