公平な立場
書籍「鮮烈ビスマルク革命」は、かなりビスマルク寄りの内容だ。ビスマルク贔屓の姿勢が目立つ。ブラームス自身も私もビスマルク贔屓だから、とても読みやすかったのだが、ブログ記事執筆ための情報収集ともなると、公平な視点も必要になる。先の書物に欠けている公平な視点を補うのに最適な本を紹介する。
清水書院刊行、加納邦光著の「ビスマルク」という本。センチュリーブックスというシリーズの182巻という位置づけ。元々このシリーズは古今東西の思想家の伝記が集められている。ビスマルクを思想家として扱った本だ。
ビスマルク信奉者には厳しい記述も頻繁に現れる。特にビスマルクは同時代のライバルたちを排除しまくったせいで、有能な後継者を育て得なかったばかりか、ドイツという国自体が、強力なリーダー無しに立ち行かなくなってしまったと説く。それが次の世紀の2つの大戦での敗戦の原因であるとか、果てはヒトラーの登場を準備したという論調も紹介されている。ドイツの民主主義と自由主義の発展を半ば意図的に阻害したと説明される。
公平な記述の他にありがたいのは巻末の年表だ。この年表をブラームス関連年表と比較することで興味深い掘り下げが可能になる。年表にも索引にもブラームスの名前は一切出現しないけれど、ブラームスが生きた時代を手際よく集約した代物となっている。
さらに、ビスマルクと同時代を生きた大物の伝記も参考にした。特に以下の2冊。
- ナポレオン3世 鹿島茂著「怪帝ナポレオン3世」
- ルートヴィヒ2世 シュミット木村真澄美「ルートヴィヒ2世の生涯」
2人とも反ビスマルクなので、この中のビスマルク記述は厳しいことはあっても無意味に甘いことは無い。その他オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世やその后妃エリザベートについての記述も参考になる。
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