はばたき
一昨日、おだやかな好天の中、次女たちの後輩37代の卒部式があった。すでに卒業式を終えている3年生を、後輩たちが送り出す伝統の儀式。卒業生は思い出深い文化ホールに制服を着て、楽器を持って集合する。
冒頭いきなり、顧問の先生が制作した45分のスライド映写がある。彼女らの3年間を凝縮した力作。この日のスライドにするために先生が日ごろコツコツと撮りだめた映像が、彼女たち自身の演奏をバックに粛々と流れる。上映中は歓声と笑い声が続く。
後輩代表の涙涙の挨拶や、顧問指揮者の絶句あたりから、会場の卒業モードが高まってゆく。私だって3分あいさつした。いくらでも話すことはあるのだが、長く話すと涙腺決壊のリスクが高まるから、サラリと切り上げた。堅い話はご法度で、子供らの反応を見ながら語りかけに徹した。
震災の影響で極端に部員が少なかった次女たち36代は、大所帯だった先輩35代の引退を心細く感じていた。後輩たちが入ってこなかったら、部活が維持できないと真剣に心配していた。そうしたら、キビキビの1年生が大挙して入部してくれた。それが一昨日卒部した37代だった。その後、頭数の少ない36代を1年生として支えてくれたおかげで、次女たちは無事引退できた。あの引退公演の日、恒例のハグタイムで流れたメモリーは、決定的な涙腺クラッシャーだった。37代の残した数々の快演は、素晴らしいものばかり。しかし私は断じてあのメモリーのサプライズに一票だ。
これがみんなへのお礼。
そして深々と惜別の演奏に入る。苦楽をともにした38代2年生と37代3年生による「オペラ座の怪人」だ。2年生は先輩に席を譲り、弦楽器の前列には3年生が並ぶ。今日ここまでの練習のないぶっつけ本番。昨年の5月以来の演奏。何の問題もないかのように、圧倒的な弦の刻みが空気を引き締める。木管楽器のソロもキビキビと嬉しそう。
そしてドイツ公演のアンコールだった「ふるさと」。今度は1年生39代も入る。女王のプライドに満ちた冒頭弦楽器の弱音。「いかにいます父母」「志を果たして」と涙腺クラッシャブルなテキストが続く。
ラストはこれまた全員でラデツキー行進曲だ。3年生がこの制服を着て演奏する最後の曲。およそ50日後に引退公演を迎える38代への強烈なメッセージ。ブラボーの声がかかる。鳴り止まぬ拍手。
思えば次女たちが同じように送られてからやっと1年だ。こうしてこのオケは毎年、念を後輩に受け継いでゆく。今日送られた卒業生はおよそ50日後のスペシャルコンサートで演奏会の裏方に回り、大学生活最初のゴールデンウィークを嬉々として後輩に捧げることになる。
はばたけ37代。
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