ビスマルクは鉄血か
「鉄血宰相」は、ビスマルク関連文章が高い確率で言及する言葉だ。1862年プロイセン宰相に就任した際の有名な演説に由来する。ドイツの統一に戦争は不可避だとの見解を早々と提示したということだ。軍事予算が可決されないという危機にあたり、憲法条文の不備をついて巧みに切り抜け、1871年までの3つの戦争に3連勝してドイツ帝国を成立させた。
「鉄血宰相」の語感は、いかにも喧嘩っ早い好戦的なイメージだが、1871年にドイツ帝国が成立した後は、1890年の退任まで戦争を仕掛けていない。外交交渉のツールに圧倒的な軍事力を用いたことはあるが実際に戦っていない。ドイツ統一の過程において戦争が必須であることは、就任演説の通りだが、その後は戦争を避けた。同じ頃英仏は世界を舞台に武力で植民地を切り取る戦争に明け暮れていた。それらを棚に上げてビスマルクを鉄血宰相呼ばわりはやや違和感を感じる。植民地の獲得には消極的だった姿勢とも一脈通じている気がする。
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