ブラームス伝
マックス・カルベックが1907年に刊行した「ブラームス伝」は、史上初のブラームスの伝記である。全4巻の大著で、没後10周年の記念碑という側面もある。カルベックはブラームス本人との交流もあったし、歌曲にテキストを提供している。後世の研究により誤りが指摘されてもいるが、ブラームス研究においては避けて通れぬ金字塔だ。
日本語版はなかった。
このたび、第4巻のみ日本語版を入手した。「ブラームスの辞書」op97の持ち主で、ドイツ文学者が、忙しい中「ブラームス伝」第4巻の完訳本を出版した。限りなく自費出版に近い。部数から申せばオンディマンド印刷とも受け取れる。
教鞭をとる傍らドイツ文学とりわけシラー研究の泰斗として論文も発表なさっているほどなのだが、ふとしたきっかけで「ブラームス伝」の翻訳を始めたという。さまざまな事情があって第4巻ののみの刊行となったらしい。
貴重な貴重な一冊をインクの乾かぬタイミングで私にお送りいただいた。
読むのはこれからだ。先生の翻訳は、原本の書かれた時点の環境や、背景にも深く顧慮されたものだ。翻訳に欠かせないドイツ語の知識や翻訳の技量においては何の不足もないのだが、音楽の知識が足りぬからと情報収集をなさっている中でブログ「ブラームスの辞書」がお目に留まったという縁で「ブラームスの辞書」をお求めいただいた。以来、翻訳にあたっての疑問点など、密度濃いやりとりをさせていただいた。翻訳への熱意は本邦初のブラームス伝完訳の栄誉とともに語り継がれるべきだ。
今回はお贈りいただいたお礼を記事にした。読み進めるうちに記事のネタが溢れ出るにきまっているので、その都度ありがたく引用言及させていただくこととする。
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