麻雀のBGM
学生時代にはよく麻雀をした。
練習の後に、たまに酒を飲むか麻雀をするかという流れになった。6対4でお酒が多かったかもしれない。お酒を飲むのは安い居酒屋か誰かの下宿のどちらかだったが、麻雀は誰かの下宿だった。場所代がもったいないからだ。
練習後食事を早々に切り上げて麻雀だ。コンビニでカップ麺やジュースを買い込んで会場となる下宿になだれこむ。会場となる下宿はどこでもという訳にはいかない。麻雀の音は非常にクレームに繋がり易いからだ。いきおいいつも同じ下宿ということになる。
やるとなったらメンバー集めは練習中に始まる。麻雀をやるなどと大っぴらに相談出来ないから、仲間内では、麻雀のことをカルテットと言っていた。それでも5人や6人集めるのは容易だった。降り番の2人はカップ麺を入れたりジュースを注いだりの係だ。時には8人で2卓を囲むこともあった。こういうときは「オクテット」と称したものだ。20時から始めるときには「8時チューニング」などと言い合っていた。始める前のあのかき混ぜも「チューニング」と称していた。クレームの原因の一つがこのチューニングであることは間違いないのだが、プレーヤーの発する奇声の方が深刻だった。上がれば上がったでうるさいし、降りれば降りたで大騒ぎ。当たろうものなら半狂乱だ。
サイレンサー代わりに音楽を流した。さすがにオーケストラだけあってみんなクラシックだ。下宿の主の好みが色濃く反映していた。モーツアルトが一番人気だ。次回の定期演奏会の曲目を流すこともしばしばだった。
腕前はみな似たりよったりだ。楽器のテクニックと麻雀の腕前の間の相関関係は薄いとだけ申し上げておこう。
興が乗れば徹夜は当然だった。明け方までは意外と平気なものだ。明るくなってから授業の1コマ目までの過ごし方が懸案だった。明るくなってから寝てしまった挙げ句に起きられずに欠席という悲劇が後を絶たなかった。明け方はみんなトイトイしか狙わなくなるので純粋な運試しになった。
大学入学後、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番をはじめて聴いたのは実はマージャンのBGMとしてであった。
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