無残な解説
音楽之友社刊行の「作曲家別名曲解説ライブラリー」第7巻ブラームスの232ページのことだ。ピアノ四重奏曲第1番を「様式法則に対する悪行」と形容してまで第2番イ長調をオーソドックスだと断ずる。問題はその後、2番イ長調を第1番ト短調と比較する文脈で
- ト短調ほどのポピュラリティを持っていない。
- 創意というか工夫というものに乏しい。
- 聴く者の幻想を容易に喚起し、耳に早く印象付ける特性的な主題を持たない。
- 外面的な効果でも劣る。
という具合に言いたい放題の論評を展開する。入門書としては大胆な踏み込みだ。筆者が誰なのか確定しない体裁なのが残念だ。
曲を聴いてどう感じるかは個人の自由だから、突っ込みどころでは無いと承知はしているが、同書の影響力を考えると無残といわざるを得ない。予備知識無く読まされたら、当時対立中のワーグナー陣営の評論家の台詞かと思われかねない。
私としてはイ長調ピアノ四重奏曲は聴いても弾いても楽しい。とりわけ第二楽章は絶品だ。同書の解説を読んで聴かず嫌いになる人が続出しないよう祈るばかりである。
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