意外なはまりっぷり
Barbara Westphal さんはアメリカの女流ヴィオラ奏者だ。ブラームスが相当お好きとお見受けする。クラリネットソナタのヴィオラ版の録音があるのは自然としても、そのCDに「FAEソナタ」のヴィオラ版が、ひっそりと収録されていた。
彼女のブラームスラブを追認するCDに出会った。2015年に入ってからの発売だ。「Convergendes」とタイトリングされたCD。「集中」とか「集約」あるいは「収束」の意味だ。
収録されているのは、ヴァイオリンソナタ第1番ト長調のヴィオラ版。ニ長調に移調されたチェロ版のCDはよく見かけるが、ヴィオラ版は我が家にも他に1枚あるだけの少数派だ。チェロ版にニ長調をオクターブ上げてではなく、オリジナルのト長調を踏襲しているのが嬉しい。場所によってはかなりのハイポジションを要求されるが、まあ涼しげにさくっと弾かれていてストレスはない。ヴァイオリンに比べて発音がマイルドなのをカバーする意図があるのかどうか、第二楽章のテンポが速い。総演奏時間6分23秒は、我が家のコレクション中最短の第二楽章だ。それでも全然バタついた感じがしないのは、ヴィオラ特有の音質のせいかと。
前置きが長くなった。
私がこのCDに飛びついたのはアッと驚く、チェロソナタ第1番のヴィオラ版だ。楽譜だけは我が家にもあるが、実際に演奏され、CDになっているケースにお目にかかれずにいた。
聴いてみる。チェロオリジナル版ホ短調をオクターブ上げている。ヴィオラの弦の配置がチェロのオクターブ上への転写だから全く無理が無い。第一楽章冒頭は、ヴィオラC線を深々とえぐって立ち上がる。第二楽章のトリオ、切ない八分音符の連続もきっちりとはまりこむ。注目はフィナーレで、チェロソナタよりやさし気に響く。
相当ブラームスが好きなんだと思う。ヴァイオリンソナタやチェロソナタ、他の作品も収録してくれないものか。
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