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2015年7月 9日 (木)

主題無き変奏曲

変奏曲といえば素材となる主題が冒頭ではっきりと提示されるのが普通である。主題が作曲者本人の創作によるものではないとき「誰それの主題による」という文言が付与される。

弦楽六重奏曲第2番の第3楽章は、批評家ハンスリックから「主題無き変奏」と評された。ある意味で変奏曲の王道をはずしているということを示唆する比喩だと思われる。問題の第3楽章冒頭で主題を奏しているのは第一ヴァイオリンだ。それはそれでよいのだが、糢糊とした伴奏パートが存在するために、変奏曲冒頭の主題の提示としては、異例なくらい主旋律が聞き取りにくいのだ。ハンスリックの比喩はこのあたりを指していると思われる。

特に第一ヴィオラだ。4分音符を3つに割った3連符が主題に絡みつく形になるのだが、何やら立ちこめた霧が引かない感じなのだ。しかししかし、こうした朦朧とした感じは実はブラームスの狙い通りかもしれぬ。第一ヴァイオリンの4連4分音符を、ヴィオラが3連符で割った形は、第一楽章冒頭の暗示になっている。第3楽章の音価を3倍に伸ばせばキッチリと第一楽章と同じになってしまうのだ。からみつくヴィオラこそがキーになっている。

やがて訪れる第3楽章78小節目。楽章冒頭以上に音符が錯綜する構造ながら、ものの見事に晴れ渡った楽想が披露される。楽章冒頭と同じ「p molto espressivo」が第一ヴァイオリンと第一チェロに置かれながら、立ち込めていた霧が鮮やかに引いている。混沌から清澄に向かうベクトルを味わうべきだと、ハンスリックが教えてくれている。

第三楽章の冒頭にスカッとした主題提示が無いという意味で「主題無き変奏曲」と呼ぶ主旨を理解出来ない訳ではない。しかしながら無い無いと嘆いているばかりでは能が無い。第一楽章冒頭の第一主題こそが、第三楽章の主題提示を兼ねているという具合に考えを進めたいものである。

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