最長の半音進行
インテルメッツォホ長調op116-6に4回連続の半音進行が現れる。
作品冒頭の「H→His→Cis→Cisis→Dis」だ。半音進行の魅力ある配置が持ち味のブラームスにあっても作品冒頭4回連続で5音にまたがる半音進行は異例である。
ところが作品の冒頭でなければ上には上がある。第一交響曲第3楽章の98小節目から101小節目にかけてのコントラバスだ。「Dis→E→Eis→Fis→Fisis→Gis」である。同楽章がクライマックスに駆け上る過程の中に現われる。実はここはコントラバス弾き垂涎の見せ場である。上行する半音進行としてはこの5連続6音が最長だと思われる。
下降する半音進行になるとさらに上を行く例がある。弦楽六重奏曲第2番第3楽章の15小節目から16小節目にかけてのヴァイオリンとヴィオラがオクターブユニゾンで6連続7音にまたがる半音進行がある。「A→Gis→G→Fis→F→E→Dis」である。この周辺はもやがかかったような半音進行の連続で、13小節目から14小節目にかけても、5連続6音の半音下降が観察できる。
おそらく下降の半音進行としては6連続7音、上行としては5連続6音が最長である。
ところが、「連続する」という定義に縛られずに考えるともっと長いケースがある。
カプリチオロ短調op76-2の冒頭の左手だ。4分の2拍子の拍頭の音だけ、つまり後打ちを無視するといい。
「H-Ais-A-Gis-G-Fis-F-E」という7連続8音の下降する半音進行が浮かび上がる。
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