アマチュア視点から
エルネスト・ハイメランとブルーノ・アウリヒ共著「クワルテットの楽しみ」について言及したついでに触れておく。
彼らはその著書で古今の室内楽について寸評を述べているが、とりわけアマチュアという立場にたって難易度数値化の試みがありがたい。「アマチュア演奏家にとって」という切り口からの基準は以下の通りである。
- 大変やさしい
- アマチュアでも初見で十分やれる
- 自分のパートをあらかじめちょっと見ておくほうがいい
- がまんできる程度の成果を得るためには充分な練習が必要
- アマチュア可能の最上限。集中的徹底的な研究無しには果たしえない
- アマチュア立ち入るべからず
いやはやほほえましい。厳しいことを言っているのに、突きっぱなしにはなっていない。さらにユニークなのは、これらが彼ら独特の分数表示になっている。たとえば「4/4」となっていた場合、最初の「4」は第一ヴァイオリンの難易度を意味している。次の「4」はアンサンブルの難易度を指す。この分数表示は非常に実用的でありがたい。つまり作品の難易度を測るのに第一ヴァイオリンの難易度がキーになると彼らは感じているということだ。実感を得るためにいくつかの有名室内楽についてその数値を示す。
- ドヴォルザーク 「アメリカ」 3/3 この人たちドヴォルザークの評価がとても高い。アメリカに対しては手放しで称賛。ほとんどバイブル扱い。
- ベートーヴェンの後期 12番以降はほとんど「5/5」で、14番と大フーガだけが「5/6」だ。
- ベートーヴェンのラズモフスキーセットは3つとも「5/5」だ。
- ベートーヴェンの初期op18の6曲はみな「4/3」で、4番ハ短調だけが「4/2」。
- ハイドン 皇帝は「4/3」
- モーツアルト 「狩」は「4/4」
- ラヴェル 案の定「6/6」
- バルトーク どれにもやっぱり「6」が並ぶ。
- シューベルト 「死と乙女」は 「5/5」
- シューマン 5に4が混じる。そんなことより2番については拒否と明言している。
- ショスタコーヴィッチ おおむね「5/5」留まり。
- スメタナ わが生涯が「5/4」
大体こんな基準。肝心なブラームスの評価を以下に記す。
- ピアノ三重奏曲第1番ロ長調op8 「4/5」
- 弦楽六重奏曲第1番op18変ロ長調 「4/5」
- ピアノ四重奏曲第1番ト短調op25 「4/4」
- ピアノ四重奏曲第2番イ長調op26 「5/5」
- ピアノ五重奏曲へ短調op34 「4/4」
- 弦楽六重奏曲第2番ト長調op36 「4/5」
- ホルン三重奏曲変ホ長調op40 「4/4」
- 弦楽四重奏曲第1番ハ短調op51-1 「4/4」
- 弦楽四重奏曲第2番イ短調op51-2 「5/5」
- ピアノ四重奏曲第3番ハ短調op60 「5/5」
- 弦楽四重奏曲第3番変ロ長調op67 「5/5」
- ピアノ三重奏曲第2番ハ長調op87 「5/5」
- 弦楽五重奏曲第1番ヘ長調op88 「4/5」
- ピアノ三重奏曲第3番ハ短調op101 「5/5」
- 弦楽五重奏曲第2番ト長調op111 「5/5」
- クラリネット三重奏曲イ短調op114 「4/5」
- クラリネット五重奏曲ロ短調op115 「4/5」
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