ロマンツェ
ドイツ語では「Romanze」と綴られる。手許の音楽事典では、「地域、時代によって様々の楽曲に用いられていて特定の内容や形式を定義できない」とある。元来「ロマン語による俗謡や詩」を意味したから恋愛歌が主流だが、ドイツでは叙情的な気分の器楽曲に用いられている。
ブラームスでは以下の通りの実例がある。
- リートとロマンツェ作品14(どの作品がリートでどの作品がロマンツェか不明)
- ティークのマゲローネのロマンツェ作品33
- 弦楽四重奏曲第一番作品51-1第二楽章ロマンツェ
- バラードとロマンツェ作品75(どの作品がバラードでどの作品がロマンツェか不明)
- ロマンツェとリート作品84(どの作品がロマンツェでどの作品がリートか不明)
- ロマンツェ作品118-5
器楽に出現するのが3番と6番で、残りは声楽だ。声楽に出現する場合、複数の作品をまとめている場合が多く全曲がロマンツェと解される作品33を除くと、どの楽曲がロマンツェなのか推定が難しい。たとえば作品14の全8曲の場合、どれがロマンツェなのか特定が出来ない。内容が恋愛ものかどうかで単純に判断していいものかどうかも確信がもてない。どの曲がロマンツェなのかさえ特定出来ない事情のためにロマンツェの性格を深く吟味することが出来ない。
作品84の5曲は全て対話体のテキストを持っている。「母と娘」あるいは「男と女」である。「男と女」の対話になっている作品がロマンツェなのではないかという推定が成り立つ。つまり作品84-4「甲斐なきセレナーデ」と作品84-5「危機」がロマンツェである。前半がリートで後半がロマンツェという訳である。ところが作品84のタイトルは「ロマンツェとリート」という具合にロマンツェを先に出している。作品14の「リートとロマンツェ」のようにリートを先に出す形になっていなければなるまい。
器楽に出現する2例についても何故この2つだけにという疑問は残る。
曖昧で輪郭がはっきりしないというのが最大の特色かもしれない。
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