クヮルテットの楽しみ
私が古くから愛読する書物のタイトル。エルネスト・ハイメランとブルーノ・アウリヒさんの共著。オリジナルは「Das Stillvergnungte Streichquartett」という。ドイツ語の本だ。私が持っているのは16版の第一刷で1975年に刊行されている。版を改めながら装丁を変えて出続けていると聞いた。
アマチュア演奏家の立場から古今の弦楽四重奏を弾きこなすためのバイブル・指南書という体裁に徹している。アマチュアが弦楽四重奏を演奏するささやかなコンサートを開く前提で、それをアシストするという姿勢がほほえましい。肝心な選曲のもとになる弦楽四重奏リストでは、各々の作品がスパイスの効いたコメントとともに紹介されている。「作曲家名」「調」「難易度」「出版社」が基本情報で、一貫性があって楽しい。弦楽四重奏を中心に別の編成にも言及しているものの、二重奏が収録対象になっていないのが至極残念だ。
この書物の中で、ブラームスは褒められている。「とにかくブラームスはよい弦楽のための作品がたくさんある」などなど。何だか鼻が高い。「アマチュアの指ではなかなかこなしきれるものではない」と釘を刺す一方で「ある程度以上のプレーヤーなら大変よく響くようにできている」と上々の評価。
1番ハ短調は、「経験豊かなアマチュアなら十分響かせられる」とおっしゃっている。各楽章へのコメントでは、第3楽章が「大変独創的」となっているのが印象的。
2番イ短調は、「1番より比較にならぬほど難しい」とされる一方「しかし大変美しい」と賛美する。フィナーレを称して「野蛮なシンコペーションに気をつけよ」とはどこまでも優しい。
3番変ロ長調について、「愉快に開放されている」という。第三楽章のヴィオラの活躍が特筆されていて嬉しい。
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