29小節目
ヴァイオリンソナタ第1番第一楽章の36小節目におかれた「con anima」のテンポがどう取り扱われているかということを調べる過程で奇妙なことに気付いた。
我が家のCDの演奏時間を調べてテンポを割り出す作業をするにあたって、当初36小節目に入るタイムを計測していた。これにより冒頭から35小節間のテンポが計算で求まると見込んだ。「con anima」のある36小節目以降と比較することで、「con anima」がテンポ上どう処理されているかが浮かび上がるという寸法だ。ところが、CDを聴きこんで行くうちに29小節目からの7小節間でテンポが変わる演奏が多いことに気付いた。29小節目からの7小節間の時間も計測して以下の通りの部分テンポを求めねば意味がないと直感した。
- 冒頭
- 29小節
- 36小節 con anima
結果は劇的だった。68種のCDのうち29小節目でテンポを動かさない演奏は3種類だけだった。「con anima」の置かれた36小節目でテンポを動かさないのは4例。この7小節間はピアノもヴァイオリンも8分音符で拍が割られることが無いから、律動感が希薄だ。インテンポで演奏しても静まって聞こえる。黙っていても36小節目とは対照的になっている。それでものここでテンポをいじる解釈が主流になっていることがはっきりした。
36小節目の「con anima」は、29小節目からのテンポとの対比こそが、表現の妙であり、必ずしも冒頭テンポとの相対ではない。鑑賞の際29小節目を意識することで、グッと面白さが増す。
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