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2015年9月20日 (日)

フレッシュさんのテンポ

カール・フレッシュは、大ヴァイオリニストにして偉大な教師。門下から次々と名手を輩出したことで知られている。ピアニスト・シュナーベルと組んだ二重奏は、時を隔てても語り継がれている。我が家には、この2人が校訂したヴァイオリンソナタ第1番の楽譜がある。オリジナルの用語に加えて2人の手による指示の追加も多い。フォントを変えてくれてはいるが慣れないうちは判別が難しい。

第一楽章の冒頭にはメトロノーム値が書かれている。「付点2分音符=56」となっている。さらに「con anima」の鎮座する36小節目にも「付点2分音符=63」と書かれている。4分音符になおすとそれぞれ「168」「189」になる。先般公開した記事「結果公表」の中、古今のCDの演奏時間から割り出したテンポと比較してほしい。

楽章冒頭で最もテンポの速いのが「189.2」のカガンだ。フレッシュさんのテンポより速いのは、68名のうち、カガン、ブッシュ、ハイフェッツ、シュミット、パメラ・フランクの5人だけだ。そのはずで68名の平均は「146.8」に過ぎない。

さらに「con anima」の鎮座する36小節目のテンポでもっとも速いのは、ブッシュで「191.5」である。フレッシュさんの言う「189」に届いているのはもう一人カガンだけ。平均は「152.8」に過ぎない。

上げ幅でいうと、16%増しだ。冒頭テンポに対する増し幅は、ダニエル・ゲーデの21.7%が最大になる。フレッシュサンの上げ幅に届いているのは、マイスキーとパールマンを加えた3名でしかない。上げ幅の平均たるや4.3%でしかない。

私のコレクションが偶然、遅い人たちばかりという可能性もあるにはあるが、やはりフレッシュさんのテンポが現代の主流よりは速すぎるのではないかと思う。フレッシュさんの愛弟子、シェリングさんもこのテンポを採用していない。

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