パターンの分類
ヴァイオリンソナタ第1番第一楽章36小節目に書かれた「con anima」について、古今のヴァイオリニストがどう解釈しているかについて、テンポを切り口にして考察を試みるプロジェクトの真っただ中である。所有しているCDを再生してチェックポイントごとにタイムを測って、テンポを計算する中から36小節目のテンポ変動の傾向を突き止める。
既に測定結果は公表した。これに基づいてパターンの分類を以下のように試みた。
311型
- 29小節目:テンポダウン
- 36小節目:テンポ動かず
- 29小節目はテンポ指示無しにもかかわらずテンポを落とし、「con anima」の指示を得た36小節目ではテンポが動かない。
- トラムマとチェリストのヘレド2名が採用する。
312型
- 29小節目:テンポダウン
- 36小節目:テンポアップ
- 29小節目はテンポ指示無しにもかかわらずテンポを落とし、「con anima」の指示を得た36小節目からテンポアップするものの、楽章冒頭のテンポには達しない。
- シゲティ、テルネンバウムの2名が採用する。
313型
- 29小節目:テンポダウン
- 36小節目:テンポアップし
- 29小節目はテンポ指示無しにもかかわらずテンポを落とし、「con anima」の指示を得た36小節目から楽章冒頭のテンポに復帰する。MM=2以内の相違は無視した。
- フランチェスカティ、オイストラフ2種とも、シェリング2種とも、クレーメル、カガン、パメラフランク、ミンツ、カピュソン、古澤、アサートン(Vc)の12種。MM=2以内は誤差とみなした。
314型
- 29小節目:テンポダウン
- 36小節目:テンポアップ
- 29小節目はテンポ指示無しにもかかわらずテンポを落とし、「con anima」の指示を得た36小節目から楽章冒頭のテンポを超えてアップさせる。
- 採用数最多で36種。半数以上53%が採用する。
321型
- 29小節目:テンポダウン
- 36小節目:テンポさらにテンポダウン。
- 29小節目はテンポ指示無しにもかかわらずテンポを落とし、「con anima」の指示を得た36小節目では、さらにテンポを落とす。
- ゴールドベルク、マンの2名が採用する。
333型
- 29小節目:テンポ不変
- 36小節目:テンポ不変
- テンポの変動がないパターン。元々何も指示がない29小節目でテンポが動かさないことに加え、「con anima」と書かれた36小節目でもテンポアップを志向しない。「楽譜通り」と言われればその通り。
- 我が家のコレクションの中ではゴールドシュタインだけがこのパターン。
334型
- 29小節目:テンポ不変
- 36小節目:テンポアップ
- テンポの指示がない29小節目は何もせずにやり過ごす。「con anima」のある36小節では、テンポアップする。ある意味で楽譜通り。
- 我が家のコレクションでは、アモイヤルとムターの新盤のみが採用する。
342型
- 29小節目:テンポアップ。
- 36小節目:テンポダウン。
- テンポの指示がない29小節目でテンポアップ。「con anima」のある36小節では、冒頭テンポ未満に落とす。
- 我が家のコレクションでは、シュタルケル(Vc)のみが採用する。
343型
- 29小節目:テンポアップ。
- 36小節目:テンポダウン。
- テンポの指示がない29小節目はテンポアップ。「con anima」のある36小節では、テンポを落として冒頭テンポに戻る。
- 我が家のコレクションでは、ファウストのみが採用する。
345型
- 29小節目:テンポアップ。
- 36小節目:テンポアップ。
- テンポの指示がない29小節目はテンポアップ。「con anima」のある36小節では、さらにテンポを上げる。
- コーガン、パールマン、マイスキー、コットマン、グルベルト、ゲーデ、メニューインの6種。
354型
- 29小節目:テンポアップ
- 36小節目:テンポダウン
- 29小節目はテンポ指示無しにもかかわらずテンポを上げ、「con anima」の指示を得た36小節目では、テンポを落とすものの楽章冒頭のテンポにまでは落ちない。
- ムターの旧盤だけ。
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