和音型「レッレレー」
ヴァイオリンソナタ第1番を構成する音型に「真正型」(レッレレー)、「到達音遷移型」(レッレファー)と名付けて、その分布を調査、考察してきた。その中で、どちらも第二楽章には、全く出現しないことを指摘しておいた。
ただし、そこには条件がある。「真正型」「到達音遷移型」の抽出条件は、1個1個が単音であることが含まれている。第二楽章にどちらも出現しないのは、その条件に根こそぎ引っかかってしまうからだ。
「レッレレー」というリズムだけを共有しながら、その全てまたは一部が和音になっているケースにまで定義を緩めると、第二楽章にも用例が現れる。これを「和音型」と名付けて調査した結果を以下に列挙する。小節番号の後に、和音のもっとも高い音を添えておいた。
- 024 Es
- 025 Es
- 026 Es
- 027 F
- 030 H
- 036 H
- 037 H
- 038 D→Cis
- 039 G→E
- 048 D
- 049 D
- 091 Es
- 092 Es
- 093 Des
- 094 C
- 095 B
上記の通り全部で16回。その全てが第二楽章で、両端楽章には全く出現しない。また第二楽章の16用例すべてがピアノの右手に集中している。この手の整合性はブラームスならではだ。聴くにも弾くにもさしたる影響はないと、見過ごすのはたやすいが、私はこの手の執着を心から愛する。
上記のうちの8番目と9番目の用例は、到達点の最後で最も高い構成音が変わってしまうケースだ。「レッレファー」の和音型である。和音型は最高音こそ変わらないまでも、それ以外の音では到達点遷移が起きているケースばかりなので、特に区別しなかった。
上記分布を見ると、和音型「レッレレー」の出現は中間部とコーダに限られる。この音型を忍ばせて、そこはかとなく両端楽章との関連をほのめかすといういつもの手口である。
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