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2015年11月 1日 (日)

雨の気分

ヴァイオリンソナタ第1番の第一楽章冒頭から8小節間、いや正確には9小節目の最初の音までの話をする。ここでブラームスは主題提示とともに、作品の持つ気分をじっと説明する。長調だというのに開けっ放しの明るさではないと。

まずはヴァイオリン。第一主題はいきなりオクターブを段抜かしに下降する。3小節目から上行に転じはするものの、一気に駆け上ることは控えられている。5小節目と7小節目には印象的な6度の下降が配置されて、気分をクリップするかのようだ。2回の6度下降に続く8分音符は、時折微妙な臨時記号が挟まれて、すかっとした上行にはなっていない。しかもこの間のダイナミクスは、ほぼ揺るぎなく「p」の枠内に留まっている。
続いてピアノに耳を転じる。この8小節全て同じパターンが維持される。すなわちスタカート付きのスラーで付点2分音符が結ばれた音形だ。先に述べたヴァイオリンの動きを際立たせることに徹しつつ、和音を塊として提示することで、この場面の気分を規定することに貢献している。
まずは冒頭の右手だ。下から「D-G-H」となっている。ここだけを取り出すとト長調和音の第二転回形いわゆる「46の和音」だ。ブラームスは弟子イエンナーに「46の和音」の特性を語っている。「耳に優しく響くから、霊感に乏しいときこの和音に逃げ込みがちだ」と警鐘を鳴らす文脈だ。なるほどやさしい響きがする。「46の和音」に限らず、最高音に「主音」、ここでいうなら「G音」が置かれないと、同じ主和音でもやさしく感じられる。
1小節目も2小節目も鳴らされる和音は「G」なのだが、肝心な「G音」が最高部に来ないのでチャーミングでやさしい印象になる。
3小節目で和音が「C」に移行するのだが、話題の最高音は「D」に留まっている。周囲は「C」の和音に移行したというのに遅刻した感じだ。難しく申せば「繋留」というらしい。次の音が「C」に下がることでめでたく周囲の和音に追いつく。繋留された「D」は確かに和音外音ではあるのだが、「E」を鳴らすヴァイオリンは小節の頭が休符なので決定的な衝突には聞こえない。小節毎の和音の移ろいの継ぎ目が巧妙にぼかされている。テンポ通りに律儀にサクサクと和音が移ろわないということだ。
こうした繋留はまた次の4小節目でもおきている。いやいや6小節目も8小節目も小節の頭は繋留されている。ヴァイオリンはその瞬間いつもスラーの終点か休符になっているから、和音外音といえども衝突には至らない。
無論ブラームスは全て計算づくだ。
この8小節間ピアノの和音の移ろいがソナタ「雨の歌」の気分を規定していると感じる。

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コメント

親2さま

同じ主題が繰り返し現れるのですが、そのうち何回かは微妙に違う音が混じっていることはよくあります。進行や音形は同じで、あきらかに再提示だと思わせながら、楽譜を横に並べて聞き込むと、臨時記号で微妙に変化していたり、オクターブの上下動があったりなど。

よくあるブラームスの手口です。

クラシックに限らず、私は何度か聴いた曲を
よく鼻歌したり、口笛したりします
で、後でオリジナル曲をもう一度聴いてみると、
リズムや旋律が少し違っていたりすることが結構あります
知らない内に勝手に編曲している訳で、何か自分の基準か
過去の記憶に引きずられているんだと思います

実は1番の冒頭、そう言う事態が発生していました
最初のバイオリンの旋律が終わったあと、ピアノが
少し間を空けて弾き始めると言う感じでフンフン歌って
いたんですが、そしてこの間合いが、1番の要だと
思っていたんですが、
ピアノは最初から、一定のリズムを保っているようです

それとも、作曲の幻想効果みたいなものがあるんでしょうか?

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