予行練習
チェロソナタ第2番は特異な調性配置で異彩を放っている。
- 第1楽章 ヘ長調
- 第2楽章 嬰ヘ長調
- 第3楽章 ヘ短調
- 第4楽章 ヘ長調
浮きっぷりという意味ではとりわけ第2楽章の嬰ヘ長調だ。調号で申せばシャープ6個になる。前後はフラット系の楽章に囲まれているから目立ちまくりだ。ちゃきちゃきの遠隔調で、古典派の伝統からみれば、逸脱もいいところだ。
さらにその浮きまくる第2楽章は、20小節ほど進んだところにある複縦線を境にフラット4個のヘ短調に転ずる。複縦線のアウフタクトのチェロは、FナチュラルからDesに飛躍する。同時にピアノはと見ると「Cis-Eis」を放ち嬰ハ長調で第一部を終えている。何のことはない。ピアノの放つ「Eis」は、実音「F」だ。
ピアノの放つ「Cis-Eis」をチェロの側では「Des-F」という具合に異名同音的に読み替えている。20小節目の冒頭、チェロが「Des」にたどり着いた瞬間、ピアノには休符が与えられ調の決定が保留されているように見える。主役のチェロはすぐさま2拍目に半音下の「C」にたどり着くのだが、今度はピアノの左手が「Des」に移ってしまう。気まぐれな追いかけっこのせいで、すっきりと調が確定しない。
この時点で意図も効果も曖昧ながら「フラット4個のFmoll」を見せておくことには、重要な意味がある。次の第3楽章ヘ短調への予行練習の意味がある。
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