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2015年11月 2日 (月)

経過音

昨日の記事「作品の気分」で、ヴィオリンソナタ第一番第一楽章冒頭の8小節で、作品の気分が規定されていると書いた。冒頭8小節の間、ピアノのパートには付点2分音符以外は現れない中、繋留によって和音の移ろいがぼかされヴァイオリンが第一主題を奏でるという枠組みに言及した上で、そうした動きすべてがダイナミクス「p」の範囲に収まっているとしておいた。

本日はその続きだ。

実は唯一7小節目にダイナミクスの揺らぎが指示されている。いわゆる松葉「<>」だ。松葉の頂点はヴァイオリン側の7小節目の後半、2つ振りした2拍目に置かれている。いったいこれは何ぞやと自問して、はたと思い浮かんだことがある。

7小節目の前半の右手は低い方から「D-A-D」で、左手が奏でる「Fis」のオクターブによりニ長調の和音だとわかる。続く後半、右手は同じく低いほうから「D-Fis-D」になる。ヴァイオリンは「H」を出すから、ひとまず「ロ短調」だ。先の松葉「<>」の頂点がまさにこの「H音」の発音の瞬間に設定されている。何故この瞬間の「H音」を軽く強調せねばならぬのか。

そのヒントはピアノの左手にある。ピアノの左手は臨時記号♯が付与されることで「Gis」が指示される。上で鳴るのはロ短調なのに「Gis」は和音外もいいところだ。こういうときはそのピアノ左手の前後の音を調べる。一つ前の音から「Fis→Gis→A」となる、和声が「D/Fis→Hm/Gis→A」と進行する中、ベースが「Fis→Gis→A」と動く。学問的にはこれが「経過音」だと思われる。

理屈は置いておくがいい。

耳を澄ますことだ。このGisには深い深い味わいがある。不安とも憧れともつかぬ、身をよじるような情緒がこの1音にこめられている。ヴァイオリン側に付与された松葉「<>」は、ヴァイオリンの発する「H音」の強調であると同時に、ここが軽い不協和音であることを仄めかす意図がある。

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