半音の効果
昨日記事「経過音」でヴァイオリンソナタ第一番第一楽章冒頭の8小節間で、たった一箇所あるダイナミクスの揺らぎについて、お叱り覚悟の私見を披露した。今日は懲りずにその続き。
身をよじるようなピアノ左手の「Gis」を話題にした。その「Gis」は続く8小節目の冒頭で「A」に解決する。イ長調の主音して最低部に収まるから座りがいいと思ったらそうでもない。ピアノ右手の最高音には前の小節から引き続いて「D」が残留する。いわゆる「繋留」として次の拍で「Cis」に落ち着く。
そして9小節目の冒頭ではさらに半音下がって「C」となる。おそらく「D7」の第7音だ。8小節目の頭からピアノ右手を観察すると「D→Cis→C」という半音進行が浮かび上がる。ヴァイオリンが8分音符の下降が始まるその瞬間だ。静謐な第一主題の提示からの舞台転換が始まる場所。
次の展開を期待させる「C」、疑問形の響きだ。このときヴァイオリンは「H」だ。八分音符なのだが、この「H」をテヌート気味に強調する演奏が多い。ピアノの終点「C」と同時だから不協和音なのだが、音高が離れているから決定的な衝突とは聞こえず、むしろ心地よいスパイスと映る。
ここから風雲急を告げつつ11小節目を目指す。
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