頂点としての7小節
ヴァイオリンソナタ第2番第二楽章の話。同楽章は表向き緩徐楽章の体裁を採る。形式として無理やり表すとABABABだ。あくまでも無理やりで、提示される都度味わいが微妙に変わるのがブラームスの流儀だ
最初の部分、超々遅いAndante tranquillo。この楽章が何故4分の2拍子なのか、凡人には測りかねる。おかげさまでブラームス作品では唯一64分音符を観察できる。それはさておき2小節目から3小節目にかけて現れる「F-C-D/C-AーB/A-C」という連なりをご記憶いただく。
13小節目からこの音形がまた現れる。やがて「A→D」で収まって「Vivace」を準備する。スケルツォ代わりのBの部分が終わって第一主題が戻るのが72小節目だ。この時冒頭のヘ長調は巧妙に転調されてニ長調になる。旋律としては再現しているのに調が別というのはよくあるブラームス節だ。79小節で調性は原調のヘ長調に戻るのだが、今度は旋律が戻らない。これもよくあるじらし。81小節目付近からもやが晴れるようにもとの旋律が戻ってくる。84小節目に先にも紹介した「F-C-D/C-AーB」が復帰することで聞き手はやっと安堵する。
そしてブラームスはそこからサプライズに入る。すんなりVivaceに行くかと見せかけて、85小節目からの回り道を用意する。そこから7小節間が、本室内楽ツアー屈指の絶景だ。理屈は要らない。同楽章中唯一の「p espressivo」があてがわれている。この7小節間の位置づけを巧妙に示してあると見た。
やがてAndante主題が三現する。150小節目だ。例の「F-C-D/C-AーB/A-C」は154小節目に用意されるが、頂点の7小節はあえなくカットされている。
ヴァイオリンソナタ第2番の頂点というべき瞬間だ。
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親2さま
後程言及する3番とあわせて、人類の宝だと思っておりまする
投稿: アルトのパパ | 2015年12月10日 (木) 23時02分
11月14日は念を送り過ぎたと反省する今日この頃です。
あくまでも個人的な感想ですけど、
2番は優等生的、お行儀よく、
と言った印象です
1番の方が子守唄ぽくてすきですね。
投稿: 親2 | 2015年12月10日 (木) 19時02分