ヌヴー
ジネット・ヌヴーはフランスの女流ヴァイオリニスト。私のようなブラームス愛好家にとって、多くの場合、代えの効かない存在であり、熱い思慕の対象だ。15歳でヴィエニャフスキー国際ヴァイオリンコンクールで優勝して、センセーションとなる。この時の2位が、オイストラフだった話は、今や伝説だ。1849年10月27日航空機の事故によってこの世を去った。
ヌヴーがキャリアのスタートに選んだのがブラームスのコンチェルトだ。しかもハンブルクでという念の入れようだ。つまり彼女はブラームスを愛した。1948年にイッセルシュテットと録音したブラームスのヴァイオリン協奏曲のCDは長く私のお気に入りだった。「気迫」「集中力」「情熱」などという単語で、しばしば称賛され、同曲の演奏史に残る録音だ、
3ヶ月ほど前、ふとしたことから、某ショップで、彼女の演奏するヴァイオリンソナタ第3番のCDを見つけた。即買い。転がり込むように帰宅して早速聴いた。先述のコンチェルトがあまりにも有名なので、目立たなかったがソナタも録音していたのだ。何と言っても、事故によってこの世を去る7日前、パリでのリサイタルでブラームスの3番を弾いている。CDに収録されているのは9月21日の演奏だが、とても貴重だ。
私のように「ヌヴー補正」がかかった者にとっては、超お宝だ。1つ年上の兄のピアノに支えられて、ヌヴー節が炸裂している。第一楽章の3、4小節目の末尾にある「<>」の独特な表現がやけに説得力を持っている。第二楽章の音の組み立てが丁寧。「気迫は腹の底にしまって」という感じ。第三楽章のスタカートが長めで新鮮。反則スレスレのポルタメントっぽい節回しが、常にオフサイドラインの裏を狙うフォワードのような確信に満ちている。
ブラームス好きなんですねという演奏。1番と2番が聴きたい。
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