末尾8
作品の様式を分析する過程で、一群の作品を作曲年代順に並べて分類する手法がしばしば選択される。前期、中期、後期などだ。一見説得力があるのだが、デメリットもある。そこそこの数がまとまらないと意味がない。1作しかないジャンルで試みても無駄だ。ベートーヴェンで言えば、ピアノソナタや弦楽四重奏でこそ意味がある。「フィデリオ」1作のオペラで試みる者はいない。
24曲存在するブラームスの室内楽ではどうか。
これも一筋縄ではいかない。作品8のピアノ三重奏曲は、1891年に改訂を受けているから、秩序が乱されている。ピアノ四重奏曲第3番は、着手でいえば第1番、第2番と同時期だが、完成だけが遅れた。着手は初期だが、完成は中期となる。
24曲という総数は魅力的だ。1や24をカウントすれば8つの整数で割り切れる。分類は遊びと割り切って手始めに四季にちなんで4等分を試みる。
<春>
- ピアノ三重奏曲第1番ロ長調op8
- 弦楽六重奏曲第1番変ロ長調op18
- ピアノ四重奏曲第1番ト短調op25
- ピアノ四重奏曲第2番イ長調op26
- ピアノ五重奏曲ヘ短調op34
- 弦楽六重奏曲第2番ト長調op36
<夏>
- チェロソナタ第1番ホ短調op38
- ホルン三重奏曲変ホ長調op40
- 弦楽四重奏曲第1番ハ短調op51-1
- 弦楽四重奏曲第2番イ短調op51-2
- ピアノ四重奏曲第3番ハ短調op60
- 弦楽四重奏曲第3番変ロ長調Oop67
<秋>
- ヴァイオリンソナタ第1番ト長調op78
- ピアノ三重奏曲第2番ハ長調op87
- 弦楽五重奏曲第1番ヘ長調op88
- チェロソナタ第2番ヘ長調op99
- ヴァイオリンソナタ第2番イ長調op100
- ピアノ三重奏曲第3番ハ短調op101
<冬>
- ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調op108
- 弦楽五重奏曲第2番ト長調op111
- クラリネット三重奏曲イ短調op114
- クラリネット五重奏曲ロ短調op115
- クラリネットソナタ第1番ヘ短調op120-1
- クラリネットソナタ第2番変ホ長調op120-2
春の六重奏曲がちゃんと「春の部」に入る。クラリネット関連が全部「冬の部」だったり、「秋の部」の冒頭が「雨の歌」だったり、いろいろと興味深い。
各部の先頭になる作品の作品番号がみな末尾8になるのがシャープな偶然である。
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