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2015年12月19日 (土)

個体識別の取り決め

古今の作曲家たちが残した膨大な数の作品は、クラシック音楽界独特のしきたりによって個体識別が施されている。これを仮に下記のように分類してみた。

  1. 概ね出版順に付与された通し番号。
  2. 作曲家本人の死後、有力な研究者によって整理分類の上付与された番号。
  3. 同一ジャンルの作品について概ね出版順に付与された通し番号。
  4. 作品の冒頭に採用された調の名前。
  5. 作品の冒頭で採用された発想用語。
  6. 作曲者自らが作品に与えた名前。
  7. 作曲者以外の第三者が作品に与えた名前。

上記のうち1番と2番は相当程度のまとまった作品が残されていてかつ現在も流布している場合に限られる。ブラームスには1番の体系が存在する。いわゆる作品番号だ。作品番号の無い作品については2番の体系も用いられている。

3番は、おなじみ「交響曲第1番」という場合の「第1番」である。同一ジャンルで複数の作品が残っている場合にはこの体系が便利だ。1番の体系との併用でほぼ完璧な個体識別が可能だ。

4番以下は、補足の機能と位置づけられる。4番には鳴っている調と記譜上の調のズレなど一定の理不尽が発生しうる。楽曲冒頭の調だけを特段に取り上げることで誤解が生じる可能性がある。とはいえブラームスにおいては破綻無く機能する。

5番はブラームスにあっては重要。発想記号が名詞機能を獲得しているケースが珍しくない他、繊細な用語使用により事実上標題として機能している。

6番と7番はいわゆる「標題」だ。特に6番をブラームスは意図的に避けていた可能性もある。

これらを駆使して個体識別が行われている。長い間練り上げられてきているだけに慣れてしまえば混乱はない。悩ましいケースがあるとすれば、改訂版の扱いだろう。1854年に発表されたピアノ三重奏曲第1番ロ長調op8は、第2番op87、第3番op101が出版された後の1890年になってブラームス本人の手によって改訂されている。現在流布するのはもっぱら改訂版だけれどもこの改訂版を4番とは言わない。改訂版であることさえ表示されずに第1番と呼ばれている。上記の体系から見て注意すべき事例はブラームスにおいてはこれだけだ。

困った事例がシュ-マンにある。ニ短調の交響曲は現在4番となっているが、作曲の順ならば1番となるところなのだ。現在流布するのは改訂版とはいえ、これを4番と呼ぶならばブラームスのロ長調ピアノ三重奏曲だって4番とならねば辻褄が合わない。シューマン全集の出版に関与したブラームスとクララに行き違いがあったことは明らかだが、ニ短調交響曲を巡るこのあたりの事情が原因かもしれない。

一定の番号がある程度定着した後になって、その作曲家による明らかな真作が発見されるというのも厄介である。新世界交響曲を「第5番」と記憶している人がいるのもそのせいだ。

ブラームスが破棄したつもりの作品がこの先ひょこっと発見されるのは、愛好家として楽しみな反面、ナンバリングが大変である。ハ短調交響曲を今更2番だなんて思えそうもない。作曲年を無視して後ろにつなげて貰いたい。

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