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2016年1月10日 (日)

お聴き初め

断言する。

「演奏に心を込めようとする意志において、世界最高のオケである」

一昨日、全国高校オーケストラフェスタにおいて次女の後輩たちが演奏を披露した。年末にお預けを食わされていたが、これでやっと正月が来る。

丹精込めたイタリア奇想曲のノーカット完全版。演奏を聴きながらずっと、考えていた。子供たちは顧問指揮者と一体になって演奏を磨き続けている。聴く人を楽しませたいと念じ続けている。親子ほど歳の離れた顧問と生徒たちではあるのだが、その目的の前に対等。

元々サプライズを仕掛けるのが好きな子供たち。顧問のお誕生日のサプライズは年々エスカレートする。顧問も負けずにサプライズを仕掛ける。人を喜ばせるサプライズは、仕掛けられた人はもちろん、仕掛ける人にとっても、その発案・計画・準備の段階から楽しいことこの上ない。仕掛けた方も笑顔になるのだ。

そうしたサプライズの頂点集大成が、演奏ということだ。子供たちの姿勢を見るにつけ、我が家の末娘がこのオケのメンバーであったことをつくづく誇りに思う。

演奏に先立つ部長の挨拶はとことん練り上げられたものだ。「お客様に喜んでいただく」という明確な目的がまず明示される。よくある「顧客満足」などとは一線を画する心からの決意表明だ。そしてそれを「次の代に受け継いで行く」と、さりげなく宣言する。このオケに綿々と引き継がれる歴史への深い敬意を感じさせる。さらにだ。気品にあふれた彼女の挨拶が、昨今のテロに言及したとき、鳥肌がたった。テロの犠牲者への哀悼の気持ちを込めると宣言し、音楽こそが平和実現のツールだと自分の言葉で主張する。彼女の視線は世界を見ている。この先に控えるドイツ公演への深い決意無しにはあり得ない挨拶。聴衆に向かっての挨拶ではあるのだが、ステージにうち揃った仲間たちへの、渾身のメッセージと映った。

所作・立ち居振る舞いから演奏が始まっているのは、もはや伝統だ。チューニングの音の美しさは群を抜く。演奏前に指揮者が起立を促すか促さないかのうちに、全員が一糸乱れず音も無く立ち上がるのはもはや様式美。

演奏のありようを正確に伝えるには、言葉は不完全すぎる。冒頭の部長挨拶が口先だけではないということが、演奏によって証明される。演奏を聴けば、挨拶はむしろ控えめだったと感じる。演奏を聴かされてみて、挨拶の説得力がなお補強される感じ。挨拶が演奏を予告するのだが、その演奏が挨拶の補完にもなっているという幸福な循環参照だ。

さて演奏の出来はと。

イタリア奇想曲の場面転換に応じてニュアンスを自在に操っている。音強音色の順列組み合わせによる無限の引き出しから、場面に応じて「どうぞ」と取り出してみせる。指揮者と奏者、あるいは奏者どうしがステージで対話している。そこではもはや個人の力量など些細なこと。今話題の駅伝同様、チームワークですよと。

乙女たちの狙いにまんまとはまって、ブラヴォーを特盛で奮発した。あの演奏が聴けるなら神様を信じてもいい。

圧倒的な実力を披露したすぐあと、演奏の余韻覚めやらぬ中、参加各校を巻き込んだ交流会に移る。交流会の進行を一手に引き受けたのもまた彼女たちオケ。有名無名のさまざまな作品を10秒程度演奏し、それにまつわるクイズが11問。各校代表にプラカードを掲げて答えさせる3択問題だ。司会進行、ルール説明、プラカードの配布、回答と解説、結果集計、インタビューなど、流れるよう。次々と演奏の断片が披露されるのだが、クラシックありポピュラーありのその出来映えが、彼女らオケの懐の深さをうかがわせる。オタクな出題内容とあいまって会場にはキラキラの空気が充満する。

クイズ3位までにささやかな景品を用意するという周到さは、エレガントな進行と合わせて普通の明るい高校生という彼女ら一面を紹介できたはずだ。

お開きは、会場全体を慈しむように包み込む「花は咲く」の演奏。いつのまにか各校生徒は左右に身体をゆすっている。楚々とした歌声もさることながら、シンバルや金管楽器の神懸かったピアニシモや、高級ワインの微妙な泡立ちを思わせるハープ、大事なポイントにクリップするようなコントラバス。そしてそして、ブレンドのベースとなる弦楽器のビロードのような肌触りなど、イタリア奇想曲の出来映えが運やまぐれではないという種明かしだった。イタリア奇想曲で難解なソロを軽々と披露した木管楽器が、悠々と控えに回るという層の厚さまでもが鑑賞の対象だった。

各校生徒にそれは伝わっている。「花は咲く」の演奏後に湧き起こった会場の温かな歓声がその証拠だ。

このオケの身内として会場にいた私は、本当に幸せだ。

やっと正月が来た。みんなありがとう。おめでとう。

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