ソロシンコペーション
勝手気ままな私の造語。複数パート作品で、他のパートが全て通常ビートを刻む中、1つのパートだけが単独でシンコペーションを奏しているケースを指す。シンコペーション大好きなブラームスだが、シンコペーションとしてリズム的な衝突を意図しながら、その衝突をたった一つのパートにゆだねているケースだ。理屈の上では、ヴァイオリンソナタにおいて、ピアノが通常ビートを刻む中、ヴァイオリンがシンコペーションを打った場合、この定義を満足してしまうにはしまうのだが、通常ビートを打つパートが多ければ多いほど、それらしい。
第4交響曲第3楽章275小節目には、我がヴィオラにソロシンコペーションが現れる。オーラスのフォルテシモに到達する直前だから、大見せ場なのだが、なかなか聞こえない場所でもある。
さて、ソロシンコペーションの最大の名所がクラリネット五重奏曲第一楽章に存在する。24小節目と148小節目。提示部と再現部に割れた同じ景色と思っていい。
クラリネットはお休み。セカンドヴァイオリンとチェロが付点四分音符2個で、8分の6拍子1小節を2分するのに対し、ファーストヴァイオリンは4分音符3個を並べる。真ん中の四分音符には装飾音符が付与されて強調され、4分の3拍子が形成されている。ヴィオラは微妙。スラーのかかりかたは、小節を2分する8分の6なのだが、音の割付が4分の3拍子のシンコペーションに聞こえる。このときファーストヴァイオリンがシンコペーションにも聞こえるのだが、ヘミオラと解することも可能だ。ヴィオラの音の割付こそがシンコペーションと判定するべきだろう。
この場所、ファーストヴァイオリンとの呼吸合わせにこそ、アンサンブルの醍醐味が凝縮されている。1小節後のフォルテの総奏の準備としても秀逸である。
« 卒業演奏 | トップページ | Quasi sostenuto »
コメント