un poco f
クラリネット三重奏曲第1楽章4小節目のピアノパートに唯一存在する指定。
これに先立つこと4小節の楽章冒頭でチェロが第一主題を奏でる際のダイナミクスは「poco f」であることが事態を厄介にしている。さらにピアノとほぼ同時に立ち上がるクラリネットにも「poco f」が存在するのだ。つまりブラームスは「poco f」と「un poco f」を明確に書き分けていることになる。「クラリネットはチェロと同じだけど、ピアノは少し違うンですよ」というメッセージだ。
日本語訳なんぞ恐ろしくて出来たものではない。ダイナミクスとしてどちらが強いかも、にわかには断言しにくい。単なる伴奏心得とするにしても「un」だけの差では微妙過ぎる。同じ言い回しが他に存在しない「むすめふさほせ」型だから比較対照もお手上げだ。
演奏者に対する「考えよ」というメッセージかもしれない。「un poco f」に直面するピアニストだけではない。「poco f」が記されたチェロやクラリネットさえも無関心にはさせない凄味がある。
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