アダージェットな音
次女の後輩たちが挑むマーラーのアダージェットを聴く機会に恵まれた。
弦楽5部とハープだけという編成。管楽器はお休み。本来第五交響曲の第4楽章なのだが、これだけを独立して演奏する。
そもそも私が大学4年の冬、就職を前にした最後の定期演奏会のメインプログラムがマーラーの第5交響曲だった。アンコールにその第4楽章を演奏したから、私の大学オケ生活最後に演奏した曲がこのアダージェットだったという話は以前にもしておいた。さらに付け加えるならその演奏会では、亡き妻が1年生でセカンドヴァイオリンを弾いていた。大学オケ時代に共演したのはこの時だけだった。
今、当時の録音を聴いても感動的なアダージェットだ。
そのアダージェットに次女の後輩たちが挑む。5月のスペコンまで練り上げてゆくのだが、このたび聴くことが出来た。
泣きそうだった。なんだか泣けた。中間部ボロボロにされた。
いやあ、むいている。あの子たちのオケにピッタリ。「カバレリアルスティカーナ」間奏曲の上位互換みたいな感じ。弦楽器とハープが弱音の中、ニュアンス1個の出し入れを繰り返す。イタリア奇想曲では、彼女たちの武器になる頼れる木管や、決定力あふれる打楽器たちの力を借りることなく、マーラーの意図を音にせねばならない。管楽器や打楽器のアシストに頼らず、弦楽器の表現力だけが頼り。フレージング、ダイナミクス配置、ボウイング、ヴィブラート、音色の総動員が求められる。
スペコンまであと3ヶ月弱。その間の積み上げを期待していくつか。鍵を握るのはチェロだ。高い音域で行きつ戻りつの旋律の処理。音色。絶対に痩せてはならぬ場所でのメリハリ。
休んでる管楽器。よかった。よかったよ。休み方がよかった。苦楽を共にする弦楽器たちの大見せ場。はたから見ても難解な曲だとわかるのだが、弦楽器の後方に控える出番のない管楽器奏者たちの表情が、本当にきれいだった。心配そうに見つめるでもない。「やってくれるはず」という信頼感がこもった表情。それが演奏の緊張感維持への立派な貢献になっていた。
おそるべし10代のマーラー。
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