合唱版アダージェット
次女の後輩たちのドイツ公演の目玉の一つに、マーラー作曲「交響曲第5番」の第4楽章「アダージェット」がある。弦楽5部とハープだけの作品。新妻アルマの音楽的肖像ともうわさされる。全曲を貫く静溢な曲想は、彼女たちの本領発揮にはもってこいだと何度も書いてきた。先の卒業式でも披露され、敬虔厳粛な雰囲気の醸成に一役買っていたと聞く。
手元に驚異的なCDがある。マーラーの「アダージェット」のアカペラ合唱版だ。テノール独唱2、アルト、ソプラノ独唱各1が加わる。つま弾くようなハープのパートまでも合唱で再現されている。演奏はローレンス・エキルベイ指揮のアクセンタス室内合唱団。
テキストはアウグスト・フォン・プラーテン「Kein Deutscher Himmel」(いかなるドイツの空も)だ。ブラームスの生まれた年に没したドイツの詩人で、ブラームスもいくつかの声楽曲にテキストを採用している。
聴いてみる。
いやはや、斬新。弱音ベースでニュアンス1個の出し入れという点ではオリジナルと同じだが、もはや別世界。中間部のソプラノ独唱には息をのんだ。オリジナルよりも敬虔な印象で、よりいっそう祈りが勝つ感じ。その手もあったかという驚きに満ちている。
ただただ祈りたい気にさせられた。
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