イタリアをこの手に
定期演奏会が終わった。
高校の音楽系サークル4つの合同定期演奏会だ。オーケストラ部以外の3年生はここで引退になる。オーケストラ部にはおよそ10日後引退の花道が別に用意されている。つまり定期演奏会は準決勝なのだ。15日のスペシャルコンサートこそが決勝戦。出番はスペコンから比べればたったの1時間なのだが、ここで奇策に出た。乙女たちは先のドイツ公演でも大絶賛されたマーラーの第五交響曲の第4楽章アダージェットをラインナップからはずしたのだ。いわば決勝戦に備えてエースを温存したようなものだ。
トーナメントは一発勝負だ。決勝戦に備えてのエースの温存はリスクを伴う。得てして準決勝で墓穴を掘るものだが、乙女たちは違った。アダージェットの代わりにと繰り出した「カバレリアルスティカーナ間奏曲」が絶品の出来映えだった。エースの代役で出てきたサブがあれよあれよという間に完封した感じだ。まあ何と申すべきか「これをドイツでやらなかったのはもったいない」という演奏。超久々に聞くカバレリはどこで練習したのか別次元だった。誤解を覚悟で断言すると、明らかに「アダージェットの予告編」だ。これを聴かせておいてアダージェットを出さないのは拷問に近い。
あれからずっとカバレリが頭の中で鳴っている。アダージェットによって磨かれた弦楽器たちの表現の幅、引き出しの数が、底知れない余裕感を醸し出していた。準決勝を上から目線でやり過ごす感じ。管弦楽のためのラプソディー、イタリア奇想曲で予定通りの大活躍をした管楽器と打楽器が際立っていただけに、中間のカバレリで弦の充実をひっそりと聴かせてもらえたのはありがたい。
スペシャルコンサートまであと7日の今日、ゲネプロに臨む。
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