色彩豊か
作品や演奏を言葉で表現する際、「色彩豊かな」と形容されるケースがある。作曲家もしばしば「色彩豊か」と形容される。
いわゆる「音色」が多彩であることを指していると思われる。「のだめ」こと野田恵のピアノもこういって評価されたことがある。演奏する作品あるいは場面によってピアノの色合いを自在に変えられるというニュアンスだ。ピアノにおいてはタッチとペダリングが全てではないかと思われる。ヴァイオリンだってボウイングとヴィブラートが全てに違いない。見た感じも若干は影響していると思う。名人になればなるほどこれらの順列組み合わせを駆使して、聴き手に「無限ではないか」と思わせることが出来る。室内楽、管弦楽という具合に楽器の数が増えれば、この順列組み合わせは天文学的数値に達する。これを作品や演奏に活かす能力を指して「色彩豊か」と呼んでいるハズである。
演奏において使用可能な音色の数は多い方がいい。必要とするときに必要な数を使えるのがよいのだ。絵の具をいっぱい持っているからといって、無駄に使うのは感心しない。
あるいは演奏が上手で色数が多くても、元の作品が色数に乏しいと宝の持ち腐れになる。たとえばラベル、ドビュッシー、ショパンはそういう意味での色数が多いと思われる。管弦楽ではベルリオーズ、Rシュトラウスあたりも入って来よう。気のせいかもしれないが、ドイツ系の作曲家はあまり思い浮かばない。
パレットの上の絵の具の種類が多いとでもいうのだろう。湧き上がる楽想次第で、いかようにも変幻自在に着色して見せる。これらの作曲家の作品を、これまた色彩感溢れる演奏家が演奏すると良い演奏になる確率が高まると思われる。バッハやモーツアルトは、少しニュアンスが違う。いかようにでも染められるという意味で、彼ら自身は「白」「無垢」と表現されることが多い気がする。
さてさてブラームスは「独特の」と表現されることはあっても「色彩豊か」という形容には滅多にお目にかかれない。世間様から「色彩豊か」とはお世辞にも思われていない。音楽を色彩にたとえるのは難しいと知りつつ、私が考えるブラームスの特質を以下に列挙したい。
- 原色を使用することは希である。限定された場所で効果的に使われる。
- 好む色が暗色系に偏る。
- 総数としての色数は多くないが、微妙な色合いの違いを繊細に表現している。
- 何色も混ぜた微妙な中間色を多用する。たとえばこげ茶を5種類使い分けたり、グレーが5種類、紺が5種類という感じ。
いらっしゃいませ。
ご賛同ありがとうございます。
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投稿: アルトのパパ | 2016年6月19日 (日) 14時14分
はじめまして。ブラームスの後期のピアノが好きです。
こげ茶やグレーが5種という感じ、とても共感しました‼︎
投稿: | 2016年6月19日 (日) 12時16分