マタイを贈られる
1823年のクリスマスのことだ。14歳のフェリックス・メンデルスゾーンは、祖母からバッハの「マタイ受難曲」の筆写スコアを贈られた。何たるプレゼントだ。羨ましさで言えばバッハ全集第一巻をクララから贈られたブラームスに匹敵すると感じる。バッハは何かとクリスマスがお似合いだ。
メンデルスゾーンはこの6年後に、贈られた作品「マタイ受難曲」の演奏にこぎつける。世に名高い「マタイ受難曲の蘇演」だ。贈った方も贈った方なら、贈られた方もただ者ではない。
ブラームスが友人ホイベルガーと指揮者の暗譜について語っている。暗譜の風潮に批判的なコメントを発した後、メンデルスゾーンに言及している。それによればメンデルスゾーンは「マタイ受難曲」を暗譜で指揮したばかりか、楽団員にも暗譜を求めそれを実現したらしい。ブラームスはそのことを絶賛することで、昨今の暗譜の流れなどまだまだ序の口扱いしている。ブラームス自身は楽友協会の芸術監督時代に「マタイ受難曲」を取り上げた経験があるからメンデルスゾーンの凄さが身にしみているのだ。
メンデルスゾーンは祖母から贈られたスコアを6年かけて勉強したことは間違いない。暗譜はその副産物だろう。
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