弾丸ツアー
次女の後輩たちが挑む全国大会が一昨日福島県郡山市で開催された。演目は満を持したサンサーンスの「バッカナール」。
晴れ姿を見届けに行ってきた。貸し切りバスを仕立てての日帰り弾丸ツアーに参加した。関係者約30名和気藹々のバスツアー、紅葉前線の遅れだけが想定外の楽しいツアーとなった。
たったの9分のためにいい大人がバスで繰り出す。行きの車内でDVDで上映して、過去の演奏を味わうことで気持ちを高めていった。人に親切にして徳を積み重ねつつ「甲子園」を目指す。
ただただ、あの演奏が誇らしい。あの演奏を披露した学校の関係者であることがひとえにうれしい。「金」という賞の色に収まりきれぬ演奏の価値。10代半ばの乙女たちの渾身の演奏は、サンサーンスへの敬意にあふれた暗譜演奏。冒頭のピチカートは、まるで邪気を追い払うかのような鮮烈な響き。元弓がヴァイオリンG線を深々と噛む音色にはただならぬ決意が立ち込める。管楽器たちの厄介なソロ群は技術的なことより、プレッシャーから逃げ出さぬ根性が見事だ。県予選よりさらに磨きがかかったテンポやダイナミクスの配置。終盤の爆発のために序盤では音量もテンポも抑制されている。指揮者の意図が隅々にまで周知されている演奏だ。全員の方向性の一致なしには絶対に出せぬ音色。気品と推進力が高いレベルでバランスしたと申すべきか。
演奏が終わり、記念撮影にと現れた子ども達は、ステージでの威容とは対象的な清楚な高校生に戻る。郡山というアウェイをホームに代えるような数の保護者が記念撮影の進行を見守っていた。来年の5月まで、あの演奏が繰り返し聴ける。
車内ささやかな祝勝会をかねたバスが戻ったころ日付が変わっていた。
« 秋の季語 | トップページ | 我ら人生の半ばにありて »
コメント