タクシス家
欧州郵便事業を確立したのはハプスブルク家のマクシミリアン1世だ。自らの居城インスブルックと、息子のフィリップ美王の住むブリュッセルの間に定期郵便を開設したのが始まり。ネーデルランドとミラノに所領を有した彼は、統治の効率を上げるために情報インフラの整備に着手した。16世紀初頭の話だ。
イタリアはベルガモのタッシス家に命じて皇帝の郵便物を無料で配送するよう命じたのだ。当初郵便は公用に限られていたが、ミラノとネーデルランドは欧州随一の貿易の拠点だから、有力商人たちの郵便ニーズがあったのだ。程なく一般郵便も認められた。タクシス家は、皇帝の信任厚く、事業の独占権と世襲権を認められて勢いに乗った。やがて貴族に列せられてトゥルンウントタクシス家となる。
以降、トゥルンウントタクシス家は、宗教改革、30年戦争などの幾多の困難を乗り越えて、血縁関係を縦横に駆使しながら現代まで続く郵便制度の基礎を築いた。欧州の偉人研究において確固たる位置づけにある書簡は、信頼性高くかつ安価な郵便制度がその基礎になっていた。研究者によってはこれを、グーテンベルクの活版印刷に匹敵するとまで評価している。
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