合格ライン
合格と不合格の分かれ目のこと。これには以下の2種類がある。
- 試験のレギュレーションの中に、合格に必要な得点が設定されている。
- 合格者の定数が設定されている。
上記1は、一定の点数がとれれば皆合格だ。受験者全員合格ということもある。自動車の運転免許もこのパターンだ。
上記2は、受験者を得点の多い順に並べて上から数えて定数に達したところまで合格になる。高校受験は大抵これだ。合否判定の作業は公開されない。だから予備校など受験産業に携わる人たちは、合格者の顔ぶれと彼等の過去の模擬試験の成績から、合格ラインを推定している。
我々現代の愛好家の手許には、おびただしいブラームス作品が残されているようにも見えるが、それらは原則としてブラームス本人が出版に同意した作品である。つまりブラームスの内部に存在した基準に適合した作品ということだ。「ブラームスの辞書」が目指すのは、基準適合品を精査する中から、ブラームスの内部基準を類推することだ。予備校の担当者が行っている合格ラインの算出と根っこが同じと思う。彼らは合格者と不合格者の顔ぶれが比較できる分だけ、推定の精度があがるに違いない。
ブラームスは基準に満たなかった作品の出版を拒絶しただけでなく、廃棄も完璧だったから、後世の愛好家は不合格者を見ることが出来ない。合格者の顔ぶれから合格ラインを判定するのはとても難しいのだ。
だから「post.」の文字が添えられた作品は貴重なのだ。ブラームスの真作であることが確実でありながら、本人が出版に同意しなかったからだ。つまりこれらは不合格者だ。合格者と比較することで、合格ラインをよりリアルに想像することが可能になる。
例外は「オルガンのための11のコラール前奏曲」op122だけだ。
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