ドイツ伝説集
原題を「Deutsche Sagen」という。グリム兄弟の名前で1816年に刊行された。「グリム童話集」初版刊行から4年後のことだ。兄ヤーコプが童話収集の過程で集めた伝説集だ。内容的に童話と被るエピソードもある。童話集との大きな違いは「いつ」「どこで」「だれが」という記述が具体的な人名地名時代名を伴うことだ。より具体的だが、文学としての味わいよりも、文献学的網羅性が優先されている感じである。
場所にちなむ伝説362編、歴史にちなむ伝説217編というヴォリュームは、童話集を凌ぐ。地名説話、国境説話、寺院の起源説話などを豊富に含む。家庭への浸透という意味では、童話集には劣るものの、詩人作家など玄人筋からは高く評価された。ハイネ、メーリケ、シャミッソーを筆頭とする数多くの文筆家たちを刺激した。もちろん一部の作曲家たちからも参照されていた。「ローエングリン」「タンホイザー」「ウイリアムテル」が収録されている。
序文に記された兄ヤーコプの言葉がある。
「童話は詩的で、伝説は歴史的である」
和訳もされているが貴重。図書館で借り浸りである。
« 210円の至福 | トップページ | ドイツ伝説集の下巻 »
コメント