輪の一員
昨日、勝った翌朝のスポーツ新聞のノリではしゃいでしまった。
もう一度だけ振り返る。
聴衆のみなさまからのアンケートを見るまでもなく、くるみ割り、フィンランディア、バッカナールとも演奏の賞賛は少なくない。それはそちらに任せるとして、今日話題にしたいのは裏方。
昨年のスペシャルコンサート、イタリア奇想曲で華麗に引退した39代OGが大学生活最初のゴールデンウィークをコンサートの準備に捧げてくれた。3月21日の初回会合の日からかれこれ2ヶ月、現役生徒が演奏を突き詰める傍らで、着々と準備を進めていた。
8時30分の集合から21時30分の解散まで、黒スーツに身を固めたOGたちの献身なしにはあのバッカナールもフィンランディアもあり得なかった。時給換算したらいくらになるのか空恐ろしい。なのに保護者が感謝の言葉をかければ「私たちもやってもらったことだから」と事もなげな笑顔が返ってくるだけ。
3名のリーダーが発揮したリーダーシップも見事。3月の初会合で「これから本番まで日曜日は全部差し出してもらいます。まだ言ってなかったけど」と平然と言い放つ部長と、続けて「今ざわついたみたいですけど」と有無を言わせぬ雰囲気をさらりと醸し出す副部長のスペシャルな連携。そこから始まった2ヶ月の準備は缶詰にでもしてとっておきたいくらいだ。現役生徒たちの演奏がCDやDVDに残るのに対して、裏方の働きっぷりは残しようがない。
保護者に対する言葉づかい、相談の切り出し方も、堂々たるもの。礼儀正しさにエレガントさ、OGのプライドが程よくブレンドされている。もうただちに就活でもまったく問題はない。芸術家として教師として抜群の指導力を誇る顧問の先生が、演奏会当日の裏方にだけは関与できないハンデを埋めて余りあるOGの献身。
加えてだ。
フィンランディアで奇跡の合唱を披露した一年生も実は実は裏方の一員。整列やプレゼントの受付、来賓のご案内など、当日来場のお客様の第一印象はまさに一年生にかかっている。その第一印象の上に、あの演奏が鎮座していると考えるべき。引退する3年生の涙、送る2年生の涙。見守る保護者の涙。高校の部活の発表会としては異例の集客。めまぐるしいこの一日が新入生の目にどう映ったのだろう。
確実なことは、2年後の今頃、こうして引退するということだ。もっというと3年後の今頃、今年のOGにも負けない献身を見せてくれているはずだ。こんなことがもう10年以上続いている。だからちょくちょく奇跡が起きるのだ。
この大きな輪の中に、わたしの娘がいることを心から嬉しく思う。
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