ティンパニの調律
古典派の時代、管弦楽に参加するティンパニは原則1対だった。2個のティンパニがそれぞれに音程を設定されるのが普通だ。ドイツレクイエムや交響曲第4番の第3楽章、大学祝典序曲ではティンパニ3個が要求される。大抵は、その作品の主音と属音に調律される。交響曲や協奏曲では楽章毎に調律が変わるのが普通だし、楽章の途中で変更ということも珍しくない。ブラームスは2番と3番の交響曲で、途中変更がある。
一方でピアノ協奏曲第1番は3つの楽章を通じて「A」と「D」が変わらずに維持される。
ベートーヴェンが交響曲第8番の最終楽章でオクターブに調律されたティンパニを用いたとき、軽いセンセーションが起きた程だ。
ブラームスも概ねしきたりには従ったが、興味深い例外もある。
交響曲第2番の第2楽章だ。楽章の調はロ長調だ。ところが、1対のティンパニは「ト」と「ロ」に調律される。何やらかぐわしい3度だなどと感心している場合ではない。「ト」という異例の設定には訳がある。51小節目でト短調に転ずる際に重要な意味を持っているのだ。51小節目冒頭に1度だけト音が鳴らされるとすぐに、「ト」を「嬰ヘ」に変更せよとの指定があり、めでたく「ロ」と「嬰へ」に落ち着く。これならロ長調の主音と属音だ。あの「ト音」は8分の12拍子の8分音符3個分だけのためにある。
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