高樹悲風多し
「こうじゅひふうおおし」と読む。三国志の英雄・曹操の三男曹植の詩の一節だ。
「高い木には厳しい風が当たる」という程の意味だ。転じて徳や地位の高い人物にはそれなりの苦労があるという寓意が込められている。好きな言葉だ。
19世紀後半の欧州楽壇を舞台にした大論争の当事者ブラームスは、図らずも片側の陣営の首領に祭り上げられていたから、いろいろな形で理不尽な物言いの標的にされていた。作品や演奏の批評あるいは手紙など文章化されたものの中には現在まで残されているものもある。一方自称ブラームス派に属していても、攻撃の標的にされなかった無名作曲家も多かったに違いないし、攻撃されているうちに本当に音楽史から忘れられてしまった人だって少なくない。批判に耐えて100年後も作品が愛されているブラームスは「高樹」なのだ。
公開された批判に対するブラームスの対応は一貫している。
沈黙だ。
かくの如き大論争も今は昔、早1世紀を経た今、それらの理不尽な批判はブラームスの威光には何らのダメージも与えていないように見える。むしろそれらを口にした発言者の名誉には少なからぬマイナスも生じていよう。失笑のキッカケになることさえあるだろう。
台風の風だけはしきりにあたるが、わがブログに悲風は当たらない。
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