空虚五度
「空虚五度」とは、第三音を抜いた和音だ。「ドミソ」という場合の「ミ」を抜くことだ。ミにフラットが付けば短調、付かねば長調になるという具合に、長短の決定権を握る第三音の省略であるから、長短いずれとも決めかねる曖昧さが売りだ。古来用例は山ほどあるが、ベートーヴェンの第九交響曲の冒頭がとりわけ名高い。16小節間「ミ」と「ラ」しか現われないという徹底ぶりである。
ブラームスは最初の管弦楽作品である「管弦楽のためのセレナーデ第1番」の冒頭でベートーヴェンの第九交響曲と同じ空虚五度を配置する。3小節目でホルンに嬰ヘ音が現われて、あっという間にニ長調が確定してしまうが、第九交響曲をすこーしは意識していたかもしれない。
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